※「影響を受けた1冊」のコーナーでは、本を通しての気付きをご紹介します。これから読む方にはネタバレありますのでご了承くださいませ。

『喜ばれる人になりなさい』(永松茂久著)を読んで

母に会いたい。

読後、真っ先に心の中で叫んでいた。でも、それは叶わない。ならば、娘の私や妹が母からの教えや思い出を語り継いでいくことで、母にとっての「喜ばれる人」になりたい。誰かの喜ばれる人になれば、自分の人生を生きている証になり、それが母が1番喜ぶことだと思うから。

この本が発売された2021年、著者の永松氏がベストセラー作家ということは知っていたが、本は読んだことがなかった。2020年に日本一になった『話し方が9割』もコロナ禍の書店で何度も見かけていたが、手には取らなかった。ただ、この本は周囲の強い推薦と、母子の物語にドキッとして興味を持った。何を隠そう、私も母のことを文章に残したいと思っていたから。そして、本が届いて、さらに驚かされた。まさか、同じ年に同じ病気で母親と関わっていたとは・・・一気に読み切った。

永松氏は、母親からの言葉「喜ばれる人になりなさい」の通り、喜ばれる人を増やすことを決めた。母(大切な人)から言われてきたことを改めて思い返し、自分と向き合うと、必ず自分の未来を創る力になるということがこの本のメッセージだと思った。

なぜなら、作者が人生の壁にぶつかったとき、乗り越えるきっかけも、この母の言葉があり、今の夢を叶える人生があったと繰り返し本の中で出てくるからだ。小さな頃から母に言われ続けてきた「喜ばれる人になりなさい」。その後、出逢う人達からの教えも、母のこの言葉がベースで全てここに行きついたという。

まず、ここに出てくる母親のキャラクターがあまりにも私の母親とそっくりで驚いた。仕事を持って子供のことは後回し。お坊さんの教えを伝える。などなど。同じ時期、同じ病気がわかった時、私たち家族も「全財産を使っても治るならかまわない!」と復活プロジェクトをイメージしていた。そして、様々な出逢いを頂いた。これは母が周りをそう動く人間にさせていたのだと改めて思った。どこまでも被って仕方がない。

とはいえ、本の中で1番心に響いたのは母親とのエピソードではなく、「全力でバースデー祝い」で、自分との共通点ではなく私には全くない発想だった。ただ1人の人の笑顔や感激の涙に全てを賭ける本気の演出。「目の前の人の感動を追いかけ回しているうちに広がった」とあった。特に商売となると、損得を考え、どこまで出せるかをベースにしてしまうが、「非効率の追求」は目から鱗だった。みんなが良くなるために、みんなのためにではなく、「1人のために」が、結果、みんなのためになるのだ。この究極の相手本位の発想は即、やってみたい。いや、やる!と決めた。決めるとアイディアが浮かんできて、ワクワクしてきた。

そして、たつみさん(著者の母)とボス(私の母)を重ねていたが、当然違う。夫、息子さん達に愛され、守ってもらえるたつみさんはとっても幸せな人生だったと思う。反面、母はいろいろ心配が多かっただろうと思うと、永松さんがお母様の望まれた生き方をして日本一になったように、これからの自分や妹の生き方が問われていると改めて感じた。

母親の言葉に一喜一憂し、気付きをもらい、成長していくところは作者と私が本当に似ているところだと思った。その中でも、

「茂久の『大丈夫だからと言ってくれる言葉は最高の癒しであり、元気になります。ありがとう」

という言葉を読んだ時には、思わずグッときて涙が流れた。

私も母から「清子に大丈夫と言われると安心する。」と言われ、今もその時のことをよく思い出す。それ以来、「大丈夫」は私の中の魔法の言葉になっている。

また、自分の声を聞かず、見ないフリをすることが多い私は、

相手のために(フォーユー)で喜ばれることが、自分の人生を生きるということ。自分を生きはじめたときから、すべてが愛に変わる。

というフレーズに感動した。本当に世の中がフォーユー精神の人だらけになることを、今、この時代に生きるからこそ、強く望む。

そのために、自分に何ができるのか。

私自身は、目の前の人に「大丈夫だよ」と声をかけ続ける人でありたい。